2008年05月19日

*・***

傷が体を蝕み
朧に熱を帯び

何をしたくて
何をしたのかすら
どうでもいいと感じる夜

小雨だけがこの行き場のない想いをかきけしてくれる

気がつけば、意識は夢魔の中…
うあああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああ
ああああああああああああ
ああああああああああ
あああああああ
ああああ
あああ

涙が溢れて止らない

どうでもいい
何でもいい

誰も助けてはくれない
あの人を

誰も守ってはくれない
あの人を

一番この世で大切で愛しい人

ジジュ、貴方を亡くすくらいなら
私は―
私は―――!

この命なんて
この世界なんて、もうどうでもいい



もう、その亡骸すらこの手には残っていない
私を包んでくれた貴方は、存在すらしない

私は知っている
もう二度と貴方に会うことはできない
現在も、過去も、この先の、遠い遠い未来でも―!

会えない
貴方の顔をもう、見ることもできない

遠く貴方は母上を見続けていた
敬愛し遠ざけたその恋慕に、私は心から尊敬を重ねた

初めて誰もいない寝室で心が泣いた
父上は私を忌み嫌い
母上は私を貴方に棄てた

けれど、貴方がどうしてそれで、
いなくならなければならなかったというのか―!

振り向いて欲しいなんて思ったことはなかった

笑顔さえ押し殺す貴方が
ただ、生きているだけで
傍にいてくれる、それだけで―



愛しさは、憎しみを呼び
怒りは、暴走を生み

切り裂き溢れ出す血ダマリが
冷静な自分とはどこか別のものに見えて仕方なかった

一番大事な貴方の遺言も
私の心を制することはできなくて―




狂った私は、咲き零す
革命を―

不当な運命に翻弄されて
憎しみの狂気に駆られて

革命を―
革命を―
革命を―

彼を殺した父上に報復を―
彼を見殺しにした母上に鉄槌を―

神などいない―
既に彼らは神などではなくなった―

正しき革命を―

血肉で洗い流す洗礼を―



「…希望の子」

「そう、こっちだ…こっちにおいで!」

立ちふさがるは、嘗ての友。

刺した剣が血に濡れる

「僕には君を殺せない、でも」

血塗れた小さな掌が、止った私の腕に触れる。

「とめることはできる」

「ほらね…君は、優しい人だ」

「革命なら他にやり方があったはずだ」

「僕達が望んだ未来は、こんな形じゃなかったはずだよ」

怒りに凍った心に、耳に、なぜか彼の言葉だけは
少しだけ届いて。

「…僕は君の友達だよ、アダム」

「何があっても  それは絶対に変らない」

最期の力だと、掌が私の身体に触れる。

(いいですか)

(私が消えても貴方のせいではありません)

(私が教えたことを、貴方は忘れてはいけません)

(私は貴方という子に教えれた事を誉れに想う)

(絶対に忘れないで…覚えていて)

(いつか、決断する時が来ても)

(貴方を、君自身を信じて)

嗚呼、私は、また馬鹿なことをしていたと知る。
手の中のぬくもりが、ただそれだけを知らせる為に飛び込んできた。
それすらも今は失って、どうすればいいというのか。


「貴方にはサせません」

耳元で、良く知った声が終始を告げる。
死を予感する痛みに、意識が薄れる。

「……イ…ヴ」

視界に、ただ彼が映る。
血塗れた神剣に彼が喋っていた。

、聞き取れない。



天上の劫火が、この世を蓋う
まさに、天蓋

戦火に天が地へと傾いていく


ただ、落ちていく

その蒼き海に






小雨が降り続いている

「…また、あの夢」

回廊を転がり落ちる夢と同じ位見続けている
懐かしいような、愛しいような
とても悲しく辛い夢。

心に穴がぽっかりと空く、
そんな感じだけが、胸の奥にあって居心地悪い。
まるで、ここが私の生き場ではないような
拒絶感すら俄かに感じている。

「マスター、大丈夫ですか?」

額に落ちる汗を0が拭い、私は口元に笑みを描く。
過去か未来か―今も見る夢を、口にすることはない。
してしまったら、きっと忘れてしまう。
あれは…いつか私が経験し経験する夢。
そう信じて違わないから、胸に仕舞ってただ現在を視る。

あの時、彼は二度と会えないと言ったけれど。
私は探してみせる…

それが地の果てであれ、地獄の道筋であれ
誰も通れない場所であったとしても

必ず、探し出す

だって私は―
姿が想い出せなくても、ジジュウ

貴方を一番、愛し続けているから

私がしなくちゃ
誰が貴方の涙を拭いてあげるというの?







……
………。


身体の軋みは、幾分か楽になったようで。
傍にいる人影に目をうすら開ける。

「…」

「…なんだ?その面は」

半ば呆れたように上司は吐き零す

「仕方ないだろう、是がないとバレる」

仮面を被りなおし身を起こすと、上司は煙草を吸いだした。

「授業は」

「偽身符」

「学園は楽できてよいいねぇ…」

私は、架せられた任務を終えた。
だが、上司は…?

「お前は変な心配すんじゃねぇぞ…」

「でも」

「そんなことしてる暇あったら今度はあんなヘマすんじゃねぇ!
 今回のは奇跡みてぇなもんだ、
 いいか、その脳みそに叩きこんどけ?」

諭すように早口に言われて
上司もやはり何らかの罰を受けたことが
身に沁みて口を閉ざす。

「…ああ」


暫く、黙って二人その夜を見送っていた。

「…俺、帰るわ」

「元気みてぇだし…
 本当は暫く、お前との会合禁止されてっしな…

 ―…覚悟はしておけよ?」

むず痒そうに呟く上司の背に、頷いた。

覚悟。

私の処分についてだろう。

反省が伺えなければ、切り捨てられる。

私に残された時間が
あとどれくらいのものなのか…

私にはまだ知る由もない。
posted by 瞳 at 01:38| ☔| Comment(0) | 楼bject reading | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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