2007年12月17日

…泣いて、泣いて、強くなる


みっともない姿を晒せる勇気など
私にはもう残っていないと思ったんだがな…



油断、したか…―




背にある温もりに、彼の指へ手を伸ばして止める。




(…触るな)


彼に触れれば、また消えてしまうかもしれない

…私が欲したものの末路を、私はよく知っている。

手を伸ばそうとすれば、いつもそれは消えていく。







…もう、嗚咽など出ない

気づけば泣き声のあげかたなど忘れ
声を殺す術だけを持っていた

殺すことを必要とされていたわけでもないのに。



ただ今は辛いだけ、悔しいだけ


自分が強くなければならない理由を、私は重ね続けている

最初に生きなくてはならなかった
存在を否定された私には何も与えられる物はなかった
食べられる物を探し、見つけることが日常だった
家族はいるが、家族にとって私は今も昔もいないものだった

暖かい家族…昔は蔑む中でも羨ましく
そして絶対に手に入らないものだった

なぜ否定されるか、疑問にすら思わなかった
私だから否定されるということだけが
ただ悔しくて仕方なかった
だから、私はいなくなった
いないフリをし続けた

だからこそ、ふいに訪れた平穏に
いない私の手を救い上げた者には今も感謝している
初めてできた仮初の家族も
私という存在は簡単に壊してしまったが…

彼は、私が強くないから…今はもういない
あの時、彼を止める術を持っていたら
彼は死へ、決して導かれなかった
あの夜の出来事は、
今もまだ胸に染み付いて時折夢で繰り返される

どれだけ悔いても足りはしない
埋められる隙間など、彼から願い下げられたから

自分に呪いをかけて
ようやく私は立ち上がる

彼を叶えよう…
ただ、私は越えられない背中に憧れた
傍にいてくれる優しさに救われた

だから、私も彼になろう
そして、できるだけの者を助けよう…

桜の咲く頃、彼女は散った
小柄な少女と交わした言葉は数えるほどもなかったが
同級生でこんな小さくても頑張っているんだと
心から思い仲良くなれたらと思った
私がもっと気遣ってやれていたら
彼女がこの世を去ることはなかった

どれだけ取り戻そうと足掻いても
それは決して取り返せるものではない

それでも呪いをかけて
私は今に踏み止まる

彼女は救えなかったけれど
彼女と同じ死に様を増やしたくはない

死を悟し、気づかせることが重要だ
だから私にできる限りの助力を捧げよう

冬の冷たさに、彼は去った
私より強く、私より遥かに多くの仲のいい者がいた彼が
なぜこの場を離れなければならなかったか…
私には未だに理解が及ばない

ただ現状を知る術を持っていながら
私はまたしても止めることができなかった

それでも私は此処にいる…

真っ赤に染まった掌の感覚を
私が殺した屍を数え、振り向いて立ち止まる。

殺した分の呪いを背負って
…果たして、私は『強い』と言えるだろうか…


何が強いと言えるだろうか…

私など、まだ彼の足元にも及ばない

ただ、事実をつきつけられて悔しいだけなのだ…



そんな者が、彼の何を守れるという?

結果がそれを指している。

戦に興じすぎて彼を蔑ろにしていなかったか…―


愚かなことだ、
私の重傷を彼が悔いる姿を見て
私はようやく罪の意識を覚える



だから、私は触れられない…―

伸ばした手は自分へ収めて

ただ今より前へ、ただ強くなることを呪う


いずれ、凡てが無に帰そうとも

この掌に何も残らないことを知っていても
いつか、何も感じなくなる日が来るとしても

強く…強く、……―ただ皆を守れるように、強く。
posted by 瞳 at 02:34| 🌁| Comment(0) | 過去録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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